ヘッドライト早期点灯研究所

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2014年03月06日

夕暮れ時の視認性研究レポート:北里大学 医療衛生学部 川守田先生に聞く視覚から見る夕暮れ時の特徴

 

「ヘッドライト早期点灯研究所」は、早期点灯の実施に役立つ情報の調査を行うチームです。今回は夕暮れ時の「視覚」の特徴についてフォーカスします。

夕暮れ時の交通事故が多い時間帯は夕方の16時から18時。
1日の中でも忙しい時間帯でもあり、気づかないうちに暗くなっていたと感じることもあるのではないでしょうか?
昨年おもいやりライト運動事務局がプレスリリースで発表しました、「夕暮れ時の視認性について」の実験を元に、テレビで紹介して頂いた際に、物の見え方を「視覚」の視点から解説をされていた、北里大学医療衛生学部 リハビリテーション学科 視覚機能療法学専攻専任講師の川守田 拓志先生に「視覚」の視点から夕方やクルマの運転への影響についてお聞きしました。

「クルマの運転」と「視機能」について

クルマを運転する時、視覚に影響を及ぼす要因は大きく「速度」と「明るさ」、「コントラスト」、「色」が大きく関係します。

まずは、「速度」と「明るさ」と視力の関係を右図と共に見てみましょう。

「速度」の観点で見ると、通常時に視力が1.0ある方でも時速60kmでクルマを運転しているときの視力は0.4にまで低下するということが確認されているようです。
更に眼の状態も影響があり、軽い白内障(目の中のレンズが濁る疾患)がある場合は、通常時に視力が0.9ある方の場合、0.1にまで大きく低下することが確認されているとのことです(白内障の程度によっては、さらに影響が大きくなります)。
また、視力が下がるだけでなく、速度が上がるにつれ、視野も狭くなることも確認されており、クルマの走行速度が上がるにつれ、より物が見えにくい状態になるということが言えます。

次に「明るさ」の観点で見ると、暗くなってくると目の奥の明るさが低下することになり、視力に影響を持つ錐体細胞の働きが低下することになります。
更に、目の奥の明るさを取り入れようと瞳孔が大きくなるのですが、目のレンズの細かい凹凸で光の進み方が乱れて、「ぼやけて見える」とのことです。

夕方の時間帯のクルマの運転には、周囲の物が見えにくくなる要因が多く発生するということがこれらの内容からも読み取ることができます。

「コントラストや色」も夕方の物の見え方に影響が

次に、「コントラストや色」についての影響も見てみると、
物体の明暗差(簡単に言えば白と黒のはっきりさ)を示す「コントラスト」や、環境と物体の持つ「色」の差が、見えやすさに大きく影響します。

右の図はコントラストの高さの違いによる「視力」について測定したグラフになります。
環境と物体のコントラストが高いものは明所視(明るい時の視力)では視力1.1だった場合、薄暮視(夕暮れ時の明るさでの視力)では視力0.9と、視力の低下も少ないですが、コントラストが低いものになると明所視での視力で0.7、薄暮視0.3とより見えにくくなる事が確認されています。
また、夕暮れ時には見えやすい色が変わり、赤と青の見え方が変わる現象があります。この現象はプルキニエ現象と言われています。
このように色の見えやすさを感じる度合いは、環境の明るさによってある程度決まっているとのことです。

「人」の夕方の生活行動について

夕方時は、1日の疲れで注意力が低下してしまい、注意散漫になりやすい状況となります。そのため、自動車の運転者や歩行者は、お互いに危険を察知しにくくなります。

この時間帯の交通事故を減らす為に考えられることとしては、
・人間の生活行動において、夕方は視機能が下がってしまうということをまずは自覚する。
・車の技術革新も行われているが、早めにヘッドライトをつける事や反射財や見られやすくなる色の服装を身につける事は、コントラストを上げる事になり、最も有効な方法なのではないか。
とのことです。

確かに、夕方の時間帯は学生の方は帰宅時間、社会人の方は移動中や帰宅している方など、多くの人が行き交い、季節によってはあっという間に暗くなってしまう時間帯というのを感じるのではないでしょうか。
そしてこの時間帯は人の視力が低下する要因が重なっているということも自覚する必要がありそうです。

見えにくくなる時間帯だからこその、見られるための光を

今回、川守田先生に視覚の視点から夕方の時間についてお聞きすることで、見る側の人の視力が低下しやすい時間帯だけではなく、周りの人が身に着けている服や物や周辺環境の色によっても見え方が大きく異なると感覚的に感じていたことを、
実際に測定した結果を知ることで、改めて夕方の時間帯は見えにくい、見られにくい時間帯という事を実感することができました。

周りが見えにくくなる時間だからこそ、相手に見られやすい光で気付いてもらう事がポイントなのではないでしょうか。
ヘッドライトや反射材を活用して光を作ることは、色のコントラストを上げることになり、見られるための光となります。

クルマを運転する方はオートライトの活用と早めのヘッドライト点灯、
歩行者、自転車の方は見られやすくする為の色や反射材の着用を実践してみませんか?

この記事へのコメント

  
1
古橋 昌俊 さん(2016.06.20)

インターネットで{夕暮れ時の視認性研究レポート:北里大学 医療衛生学部 川守田先生に ...」拝読させて頂きました。

私は、労働災害防止予防策の運動と云う視点考えたときに、
大切な要素に平衡性・俊敏性・視認性があります。
平衡性や俊敏性の予防対策運動は、理解できています。
しかし、
視認性機能低下への少しでも抑制できる予防対策運動には、
具体的にどんな運動があるのかをお求めています。

お分かりのようでしたら、或いは、一歩でも私の求める方向に
進める事ができれば幸いです。
6月30日までに求められればと思っています。
多忙とは察しますが、よろしくお願いたします。

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