ヘッドライト早期点灯研究所

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2017年02月06日

クルマにあるライトの種類を改めてチェック!

 

「ヘッドライト早期点灯研究所」は、早期点灯の実施に役立つ情報の調査を行うチームです。今回はクルマにあるライトそのものに着目。ライトそれぞれの機能や目的をモータージャーナリストの会田肇さんに調査してもらいました。

周囲が暗くなり始めたら「まずスモールライト」ではなく、「ヘッドライト」!

交通事故を減らすその第一歩、それは対向車や歩行者などにいち早くクルマの存在を知らせることです。クルマの存在にいち早く気付いてもらえれば、相手側も素早い行動が可能となり、危険から未然に逃れることが可能になります。その重要な役割を果たすのがヘッドライトなのです。

「おもいやりライト運動」ではこれまで、ヘッドライトの早期点灯活動を全国各地で続けて参りましたが、2015年度の調査でも目安として伝えている日の入り30分前のヘッドライト点灯率はわずか10.9%しかありませんでした。一方で、日の入り30分前~20分前になるとスモールライトを22.4%がつけているとの結果が出ています。

日本では古くから、周囲が暗くなり始めたらまずスモールライトをつけ、路面を照らす必要になったらヘッドライトを点灯させる習慣が広く浸透しています。クルマに装着されている「オートライト」の点灯タイミングもその習慣に倣って設定されていることが多く、それもこの調査結果を生む一因になっていると思われます。

しかし、日の入りの前にスモールライトを点灯しても、クルマが目立つ存在にはなり得ません。やはり光量の多いヘッドライトを早期に点灯することこそ、相手に自車の存在を知らせる有効な手段なのです。そこで、今回はクルマに搭載されている様々なライトを適切に使い、自車の存在を相手に知らせるという観点でそれぞれの正しい使い方を考えてみたいと思います。

クルマの前にあるライトは状況に応じて使い分けを!

クルマの前にあるライトとして、ヘッドライト、スモールライト、フォグライトなどがあります。最近はスモールライト的な使い方をするデイライト用LED(発光ダイオード)を装着するクルマも増えてきました。

ヘッドライト:言うまでもなく、路面を照らして暗い夜道を走りやすくするだけではなく、周囲に自車の存在を伝える事にもつながります。交通量の多い市街地や対向車がいるときは幻惑を防ぐためにロービームにしますが、それ以外の郊外や高速道路上では積極的にハイビームに切り替えることが求められています。ヘッドライトは単に点ければいいというわけでなく、周囲の環境に応じて早めに点灯を心掛けるだけではなく、適切にロー/ハイを切り替えることが必要なのです。

スモールライト:前方を照らすことではなく、車幅を対向車や、二輪車、自転車等に知らせる目的を持っています。それ故、その光量はもともと少なく、日の入り前に点灯しても周辺の街の明かりに溶け込んでしまうレベルです。それでなくとも夕刻は周囲が暗くなり始め、いろいろなものが見落とされがちな時間帯。その中でも動いているクルマがスモールライトを点灯しても見落とされる可能性は高く、それが事故を招く可能性もあり得ると認識すべきなのです。日の入り前の点灯は、スモールライトではなく、ヘッドライトの点灯を!

フォグライト:このライトは霧などの微少な浮遊水滴を反射しないよう、焦点を定めずに照らすことを目的としているもの。その特性は、遠くを照らすというよりもクルマに近いところを左右に広く照らします。そのため、市街地や晴天時に点灯すると対向車や先行車に眩しさだけを感じさせる迷惑な結果となりかねません。それを踏まえれば、フォグライトはクルマの存在を知らせるという観点で適切ではないと言えるでしょう。

クルマの後ろにあるライトも自車の存在を知らせる重要な存在!

次にクルマの後ろにあるライトとして、テールライトやブレーキライト、リアフォグライトの機能について考えてみましょう。

テールライト:後続車に自車の存在を知らせたり、車幅を確認するためのライトです。その意味で、歩行者や対向車に対して気付きを与えるものとは少し違います。スモールライトと同様に輝度はそれほど高いものではなく、雨天走行時は巻き上がる水飛沫でテールライトの点灯が見えなくなることもあります。その意味でテールライトはスモールライトに近い存在なのです。

ブレーキライト:ブレーキを踏んでいるときにのみ点灯する制動灯です。この点灯によって後続車は先行車がブレーキをかけたことを認識できるようになります。このランプが切れていたりすると追突の原因ともなりますから、常日頃より点灯状態は確認するように心掛けたい重要なランプです。また、これとは別にトランクやリアウインドウ内に設置された「ハイマウントストップランプ」があります。車体後部中央の高い位置に独立して設置された制動灯のことです。

リアフォグライト:テールライトやブレーキライトとは別に備わる、後続車向けのフォグライトです。欧州では装着が義務づけられていますが、日本ではまだあまり知られていないライトです。そのため、日本では一部車種で標準装備されているか、オプションで装着できるようになってきた程度です。ただ、リアフォグライトには霧や雨天走行時など視界の悪い時でもクルマの存在を後続車に知らせるという重要な機能があります。

フォグライトは適切な時だけ、正しく活用して事故防止!

先にも述べたように、雨天走行時は水飛沫が後方に舞い上がるため、テールライトではクルマの存在を示せなくなり、特に昼間はテールライトの明るさでは役不足となることが少なくありません。リアフォグライトはテールライトよりも明るいブレーキライトと同程度の輝度を備えているため、視界が悪いときでもよりハッキリと後続車に存在を知らせることができるのです。ヘッドライトの点灯がクルマの存在を知らせるのに有効であるのと同様、リアフォグライトもとても重要な機能を果たすと考えていいでしょう。

ここで気をつけるべきは、フォグライトは前後共に晴天時の何でもないときに点灯して走行している人が決して少なくないことです。おそらく、フォグライトを点灯させるとクルマの存在を強調できることとなり、それが「カッコイイ!」と認識されている可能性があります。しかし、晴天時のこれらを点灯するとフロントの場合は対向車に、リアは後続車に過剰な輝度を与えることとなり、夜間であれば幻惑の要因にもつながります。特にリアフォグライトは後続車にとって見せられ続けることとなり、迷惑この上ありません。前後とも晴天時はフォグライトを点灯しないよう心掛けましょう。

クルマの前後問わず、ライトは、自車の存在を相手に知らせる為の重要なもの!

ここまで、クルマに装備されている各ライトにはきちんとした役割があることを説明してきました。各機能を正しく理解することで自ずと正しい使い方ができるようになります。今点灯していることが対向車や歩行者などへどんな効果をもたらしているかを考えることも重要なのです。ライトは路面を照らすだけでなく、相手に存在を知らせるためにも重要な機能を持っていると理解しましょう。
街の明かりがつき始める時間帯にスモールライトを点灯しても、クルマが目立つ存在にはなり得ません。日の入りの前に早めにヘッドライトをONにしましょう!

●会田 肇
1956年2月茨城県生まれ。
明治大学政治経済学部卒。自動車雑誌編集者を経て、1986年よりフリーランスとして独立。主としてカーナビを含めたITS(高度道路交通システム)を中心に執筆活動を展開。カメラ機材の検証レポートも行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。デジタルカメラグランプリ審査員。

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