「ヘッドライト早期点灯研究所」は、早期点灯の実施に役立つ情報の調査を行うチームです。今回は前回ご紹介した、日の入り前後の時間帯におけるヘッドライト点灯車両のカウント調査にて、「照度」にフォーカスを当てた結果をご紹介します。(前回の記事はこちらからご覧ください)
照度とは、物体の表面を照らす光の明るさを表す物理量とし、単位はルクス(記号: lx)で表現されます。日本工業規格の「JIS Z 9110」では建築物などの空間の用途に合わせた明るさの基準が設けられているため、明るさの目安としてみることができます。
また、今回の測定は照度計(注1)して、記録用カメラの設置場所で上を向かせて測定しています。
まずは測定場所の照度の移り変わりについてみてみます。
実験を行った場所は市街地の道路になります。調査日の2日ともに天候は晴れでしたが、微妙な雲など天候により差が出ています。
照度は日の入りだけでなく、太陽が建物の陰に隠れる事でも照度が下がります。
ここでは例として、14年10月24日の測定データを見てみます。
日の入り60分前~50分前の間に太陽が隠れていたという事もあり、60分前で約6,000lxだった照度が50分前で約4,500lxに急激に下がっています。その後、40分前:約3,000lx、30分前:約2,000lx、20分前:約1,200lx、10分前:約500lx、日の入り:300lxとなります。
JIS照度基準では、2,000lxで商店の「店頭の陳列」に求められる明るさ、100~300lxで商店の「洗面所、便所、階段、廊下」に求められる明るさとなるため、おもいやりライトタイムはまだ明るい印象があり、日の入り前後は薄暗い印象を持つのではないでしょうか。また、測定場所の街灯が点灯したのも日の入り前後の100~300lxの明るさで点灯しています。
次に照度別の点灯率をみてみます。
点灯率の変化が始まるのは、1400~1600lx、一気に増えるのが日の入り後になる200lx以下となります。
1400~1600lxは日の入り30分~20分前辺りと置き換えられるため(時間別照度のグラフより)、この頃から徐々にヘッドライトを点灯する車両が増え始めていることがわかります。
1600lx以下の明るさが周囲の環境や人の感覚・心理に影響を及ぼしてヘッドライト点灯につながっていると思われます。
ここまでは、照度別によるヘッドライトの点灯率についてまとめてみましたが、
照度による視力の変化についても調べてみました。
東芝ライテック株式会社に掲載されている、照明設計の基礎のページにある“照度>(1)照度と視力”に掲載されている図1(照度と視力の関係)を見てみると、日の入り30分前の照度1,400~2,000lx辺りは、視力低下が始まる頃ともみられます。
以前ご紹介した、北里大学 医療衛生学部 川守田先生に聞く視覚から見る夕暮れ時の特徴では、明所と暗所の違い、運転時の速度、見る対象物のコントラストによっても視力に変化があるとご紹介しました。
日の入り30分前は明るく感じるかもしれませんが、これらの要因によっては相手の視力低下が始まっているかもしれませんので、ヘッドライトを点灯して、見られやすくした方が良さそうです。
今回は、屋外の明るさについて、照度計を使い、測定を行いました。
時間とは異なり、明るさで見てみることで新しい角度で点灯率を見ることができたのではないでしょうか。
また、今回の照度は屋外で測定しましたが車内の照度も図ってみると何か関係性が見えてくるかもしれません。
今後のテーマとして追ってみようと思います。
クルマを運転する方はオートライトの活用と早めのヘッドライト点灯を、
歩行者、自転車の方は明るい色の服装や反射材の着用を実践してみませんか?
※調査概要について(調査は前回ご紹介した記事と同一のものになります。)
○調査方法:
・日没60分前から日没60分後の合計2時間、「総通行台数」及び「ヘッドライト点灯車台数」を測定
・日没60分前から日没30分後の1時間30分については、「車種別」「自家用/事業用」も測定
・測定箇所において、定点観測調査を実施。目視カウント観測及びビデオ撮影及び写真撮影
○調査実施日:
・2014年10月24日(天気:晴れ 日の入り:16:56)
・2014年10月28日(天気:晴れ 日の入り:16:51)
○調査対象地点:神奈川県 市道 横浜逗子線栗木(横浜市磯子区栗木1)下り線
国土交通省が平成22年に実施した全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)の実施地点から選定
○調査実施:株式会社日本能率協会総合研究所
注1…SMART SENSOR AR813Aを使用
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