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2012年08月28日

賛同パートナーレポート 岩手編 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)

 

東北訪問で、もうひとつ訪れた場所がありました。岩手県遠野市の公益社団法人シャンティ国際ボランティア会の岩手事務所です。
SVAは1980年にカンボジアの難民キャンプで子供達に絵本を届ける活動から始まった、アジア地域で学校建設事業や図書館事業をしているボランティア団体です。東日本大震災の後、SVAは移動図書館のプロジェクトをスタートさせました。その移動図書館プロジェクトが、おもいやりライト運動の賛同パートナーなのです。

「いわてを走る移動図書館プロジェクト」

陸前高田市、大船渡市、大槌町(旧三陸町)、山田町。移動図書館が巡回する街では図書館は、山田町を残して壊滅的被害を受け。大多数の図書が流失してしまいました。建物に大きな被害がなかった山田町の図書館も、避難所として使用されていたために、当初は全く再開の目途が立っていませんでした。

震災の翌月、被災地に派遣されたシャンティ国際ボランティア会スタッフの鎌倉幸子さんは、そうした状況を目にし、SVAが海外で行っている図書館の事業を、この被災地でやろうと心に決めたそう。2011年7月から、鎌倉さんがスーパーバイザーとなって移動図書館の運行をスタートさせました。

「立ち読み、お茶のみ、おたのしみ」をモットーに、移動図書館は運行されます。朝の10時頃に出発し、仮設住宅を中心に3カ所を回り、移動時間は長いところで1時間20分ほどもかかるのだとか。1カ所に45分から2時間ほど滞在し、その間は図書館としての活動だけではなく、来た人にコーヒーやお茶、ジュースを振るまい、「おしゃべり」の場となったり、本のリクエストに答えたりと大忙し。3カ所を回って帰る頃には夕方になってしまうそう。

「本」を通じたコミュニケーションと場づくり

約2000冊の本を積んで、約30カ所の仮設住宅を定期的に回る移動図書館車。利用する方は女性が多く、40代〜70代と年齢層は幅広いのだとか。運行を始めた当初は、あまり文字の多いものはまだ読みたくないと、写真集やガーデニング、料理の本を借りていく人が多く見られたそう。冬になると編み物の本のリクエストが増えたり、次第に文庫本に手を伸ばす人が増えたり、「自分に何がおこったのか知りたい」と、震災関連の本を借りる方が出てきたりなど、時期や季節によって変化するニーズに丁寧に答えているそうです。

そうしたリクエストに答えていると、本を通じて仮設住宅で暮らす人々の生活や抱えている苦労を間接的に知ることができるそう。移動図書館は本を手に取る場所というだけでなく、人々が自然と集うことのできる場所となっています。抽選で住む場所が決まる仮設住宅では、お互いに知らない人同士で暮らしているのです。生まれたばかりの赤ちゃんを抱えたお母さんが育児書を探しにやって来て、「他に知り合いがいないんです」と話されたこともあったそう。

貸し出される本は、《大震災》出版対策本部やブックオフから寄贈されたものの他、企業や個人から受けた募金で、地元の書店から購入しているそうです。ブックオフオンラインを経由して自宅にある本を売ることで、買い取り金額に10パーセント上乗せした額が、移動図書館の図書購入費として寄付されるという仕組みもあります。

地元の方に、ご迷惑をおかけしたくない

移動図書館プロジェクトがおもいやりライト運動の賛同パートナーとなったのは、鎌倉さんがきっかけでした。横浜で行われた図書館関係者の懇親会で、おもいやりライト運動の事務局スタッフと出会い、運動を知ったのだそうです。

鎌倉さんは、「移動図書館で使用している車の色がおもいやりライトカラーのイエローと似ていたこと、車を日産自動車に寄贈して頂いていることなどから、事務局の方と話が盛り上がりました。すぐに岩手のほうに賛同したいという話を投げかけたら、即日で「ぜひ」という返事がきて。それからおもいやりライト事務局からステッカーなどが届いて、ホームページに賛同パートナーとして名前を入れていただいたんです。」と話してくれました。

そもそも、鎌倉さん自身も移動図書館プロジェクトには交通安全の意識が欠かせないと感じていたそうです。

「運行スタート時から、交通安全について現地スタッフに強く話していました。なぜなら、私たちのような援助団体が事故を起こし、地元の方にご迷惑をかけたということが実際にあったからなんです。私たちも車が中心の活動ですから、地元の方にいかに迷惑をかけないで活動を続けるかということが大切だと思っています。」

「やってる! やってる! 早め点灯って、大事だよね。」

普段は東京と岩手を行き来しながら活動している鎌倉さん。実際に図書館車を運営されているメンバーは、地元で雇用されたスタッフさん達です。

「夏はまだよいのですが、秋になると3カ所目に回る場所は暗い中での活動になってしまいます。いい道路ではないので、暗くなってからの移動は道を知っていても怖いです。」

と、話してくれたのは、陸前高田地区のリーダーをされている吉田晃子さん。

吉田さんは、おもいやりライト運動を知る前から、ヘッドライトの早期点灯を心がけて実践しているそう。以前、「交通安全母の会」の活動をされていた時に、ライトを早めに点けましょうと呼びかける活動をしていて、早期点灯が大切だということをよく理解されているからです。

「おもいやりライトのステッカーが事務所に届いて、ライトを早めに点けましょうということだったので、やってる! やってる! と思いました。ライトを早めに点けることや明るい色の服を着ることなど、暗くなってきたら気をつけなければならないことがいくつかあるけれど、それがパッケージ化されて「おもいやりライト」として伝えているのがいいな、と思いました。」

以前から日没後に道を歩くときにはタスキ型の反射材を身につけたり、散歩に行くワンちゃんにも首輪に反射材をつけたりと、ご自分でも工夫をされているそうです。

移動図書館車は、今週末も岩手の海岸沿いを走ります!

シャンティ国際ボランティア会でお会いする方々は、どなたもたくましいなあ! という印象を受けます。おもいやりライト運動にも、どんどん賛同して、どんどん楽しんでくださる。どんな質問にも、明るく前向きにお話をしてくださいます。こんな方々が、見た目も可愛らしい移動図書館車に乗って訪ねてきてくれるのですから、仮設住宅の方々もきっと心待ちにしていることでしょう。

SVA岩手事務所を訪問した際に発見した、事務所前に駐車している車に貼られたおもいやりライトのステッカー。楽しんで貼ってくださっているのが目に浮かぶようで、温かな人のおもいやりを感じた瞬間でした。

移動図書館のプロジェクトをスタートさせる時、「移動図書館は約束だよ。必ずその地域に通い続けなくてはいけないんだよ。」と、継続することの負担を心配されたこともあったそう。でも、今週末も移動図書館車は岩手の海岸線沿いを走っています。これからも元気に運行できるよう、応援しています!

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