おもいやりライト運動がスタートした直後から、積極的に活動に関わってくださっている小糸製作所。静岡工場にお邪魔して、安全環境部の大抜部長に交通安全対策に日々取り組んでいる長年の工夫などお話を伺いました。さらに、ヘッドライトを作っている工場も見学させていただきました!
小糸製作所は、自動車照明器(ヘッドランプ)の製造では、国内60%、世界20%のシェアを誇るリーディングカンパニーです。静岡にある4つの工場と、九州で国内向けの主な製品の製造をおこなっています。安全への取り組みは、工場での事故を防ぐことはもちろん、交通事故防止にも取り組んでいます。
過去10年間で、社員が加害者または被害者になった交通事故の件数は減少しました。被害事故を防ぐことが難しいのですが、事故を起こされないようにする工夫を考えています。
安全環境部が主導して月に一度各部署の安全担当者を集めた会議があり、全社に交通安全への取り組みに関する情報を定期的に共有しています。具体的な取り組みとしては、社用車を利用する場合、予約をする際に必ず交通安全に関する資料を読んで同意して頂いてから、社用車を貸し出しています。この資料で「おもいやりライト」について記載しているのですよ。
小糸製作所では、全社員に各自の通勤経路をマップ化して、危険な場所、気をつけるべきところが分かるようにして、提出してもらっています。はじめは、通勤で自動車を使用する人のみが対象でしたが、歩行者や自転車で通退勤する社員にも作成してもらうようになりました。
通勤MAPは全国の小糸製作所に勤務する従業員約6,000名に活用していただいています。各工場での安全対策についてはそれぞれの工場で取り組んでいますが、静岡工場では従業員約3000人全員に通勤MAPは浸透しています。
―大企業体で、社員に交通安全について徹底させることはとても難しいことかと思います。御社ではどのような取り組みをされているのですか?
大事なのは「最後まで徹底してやりきれているかどうかが」だと思っています。
マンネリを防ぐために時には奇をてらったことも必要ですが、ありふれたことをどれだけやりきるか、続けられるかが大切です。ありふれたことを継続するのは、大変ですし、工夫が必要なことです。
小糸製作所がおもいやりライト運動について知ったのは2011年秋でした。それ以来、いろいろな交通安全の取り組み中の一つとして、おもいやりライト運動にも取り組んでいます。
―交通安全への取り組みにより事故件数は削減されたのですか?
全体としては事故件数は減少し、大きな事故はなくなってきています、小さな事故の場合でも、事故例を記録して、回避できる方法があったのではないかと検討することで、事故を減らすための参考にしています。
―交通安全の意識付けのために、何か工夫されていることはありますか?
月に1度くらいは交通安全について考える機会がないと、継続した意識付けができないと思っています。交通安全について考えてもらうために、通勤経路で「ヒヤリ・ハット」するような想定状況を社員に考えてもらい、書面で提出してもらっています。
出張時には、クルマで移動予定のルートを書いて上司に提出してもらい、上司からも一言、アドバイスを書いて返してもらうようにしています。「気をつけて運転してね」と一言声をかける、こういったやり取りで「注意しなきゃ」というスイッチを入れてもらえればと思っています。あの手この手で、交通安全を忘れずに心がけてもらえるように工夫しています。
また、ヘッドライトを点灯する時刻について、この時期は何時何分に点灯と具体的な時間を伝えることや、正しいルールを教える教育にも取り組んでいます。調査をしたところ、一時停止ラインで止まらない人がいることが判明し、ルールを正しく覚えて実行できていない人もいることが分かったのです。安全ルールを守りましょうと言うだけではなく、何か正しいルールなのか教えていかないといけないと認識したのです。
今回、特別に工場に入らせていただき、ヘッドライト製造の組み立て作業を見学してきました。この静岡工場では、一日約20,000個以上ものヘッドランプを作っているそうです。
最先端のヘッドライトについてもご紹介いただいき、これは!と思わず注目したのがAdaptive Front Lighting System(AFS:配光可変型前照灯システム)。運転時の速度やハンドルの舵角に合わせてヘッドライトが上下左右に動き、広範囲かつ適切に光の照射方向を制御することで、カーブや交差点での視認性が向上し、より安全な運転につながるライトです。
ヘッドライトの技術が向上することで、ドライバーが周りを見やすくなり、歩行者などからもライトがまぶしくなくなり、クルマが見られやすくなるようです。交通安全にも効果がありそうで、新技術の普及に期待が高まります。
―コイト運輸で、交通事故防止に気をつけていらっしゃることを教えて下さい。
佐野社長:
コイト運輸のトラックは、静岡県内から遠くは九州まで、一日に11トンの大型車が約150台、4トンが50台と、毎日200台ほどが走行しています。
加害事故はもってのほかですが、もらい事故も事故のうち。運転中に、あおったり、あおられたりすることも、この業界では当たり前なんですよ。あおられるような運転はしないように、危ないところには近づかないように指導しています。
トラックは高速道路だけでなく、一般道路も走りますが、最近は自転車が車道の左側を走っているので、車に近づいてきたり、ふらついたりして本当に怖い。ドライバーが十分気をつけるべきと社員に教育しています。
―トラック協会でも、早期点灯を呼びかけるステッカーやのぼりを作られたそうですね。
トラック協会・窪田理事、小林部長:
以前から、交通安全に取り組まねばと思っていたところ、小糸製作所からご紹介いただき、おもいやりライト運動を知りました。
おもいやりライト運動のアイディアを取り入れ、静岡県警と協力しながら、トラック協会独自の活動として、ステッカーやのぼりを作って啓発活動をさせていただきました。
ステッカーは、デザイナーに作ってもらったのですが、語呂合わせで親しみやすいように、「てんとう虫」を考えてくれました。
―トラック協会でステッカーは、季節ごとに何時にヘッドライトを点灯すべきか、目安の時間が記載されてるのがいいですね。
佐野社長:
トラック協会では、車内でドライバーの目につくところにステッカーを貼れるようにステッカーを作って配布されました。コイト運輸でも、ドライバーの手元にステッカーを貼っています。
点灯の目安となる時間が書いてあるのは合理的ですね。手元で絶えず目に入ることで、意識するということにつながりますので。
―運送業界にとって、事故削減は大きな課題なのですか?
トラック協会・窪田理事、小林部長:
運送業界全体で、事故件数は年々減っていましたが、ここ数年は横ばいになっています。事故削減という目標はなかなか達成することが難しいので、協会をあげて県警と一緒に様々な取り組みを行っていければと思っています。
「“目指すところは交通事故0”という同じ目標を持つ様々な団体が、静岡県全体でつながることで、大きな広がりになると思うのです」と仰っていた佐野社長の言葉が印象的でした。
事故を減らしたいという同じ思いをもつ方々と、もっともっとつながっておもいやりライトを広めていきたいですね。
<おまけ>
2月に関東甲信は記録的大雪となりましたが、静岡では雪が降らなかったそうです。そんな穏やかな環境もあってか、お会いした皆さんは、あたたかい素敵な方々でした。名物の静岡おでん(黒はんぺん入り!絶品!)もいただき、また静岡に来よう!と思った事務局メンバーでした。