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2015年04月09日

夕方安全創造会議2014ゲスト Think the Earth 上田壮一さんインタビュー

 

昨年秋の夕方安全創造会議のクロストークにご登壇くださった、一般社団法人Think the Earth 理事/プロデューサーの上田壮一さんは、日本にまだエコ意識や企業の社会的責任(CSR)という考え方が広まる以前から「社会に貢献するデザイン」をテーマに活動をされてきました。夕方安全創造会議では、トヨタ自動車が一般参加型の社会貢献プロモーションとして行う水辺の自然環境改善運動「AQUA SOCIAL FES!!(アクアソーシャルフェス)」についてお話くださったことを覚えている方も多いと思います。今回は代官山のオフィスを訪問し、地球を舞台に活躍する上田さんの視点から、日本の交通安全事情についてお伺いしてきました。

(写真左が上田さん、右が広報スタッフの笹尾さん。上田さんが手にしているのは、人類の愚行を収めた写真集『百年の愚行』の続編としてクラウドファンディングReadyforにて資金調達し、昨年12月に刊行された書籍『続・百年の愚行』。)

エコやソーシャルにまだ関心が芽生えていない時期からの活動

上田さんが現在のような活動をスタートしたのは、宇宙の視点から時を知る「地球時計」という腕時計のアイディアを実現させたのがきっかけでした。まだ世の人々が環境問題や社会問題にほとんど関心を向けていなかった、1997年のことです。その後、様々な出会いの中で、上田さんは「ビジネスと社会貢献を同時に手がけていこう」と考え、2001年に一般社団法人Think the Earthを立ち上げ、ほぼ同時に株式会社スペースポートを立ち上げました。日本の企業が本格的にCSRに取り組み始めたのは、2003年頃のことです。上田さんはソーシャルデザインの草分け的存在なのです。「CSR活動については、多くの企業が積極的に取り組むようになり、この15年でずいぶん状況が変わってきました。」と上田さんは言います。

Think the Earthの近年の活動としては、生物多様性や水を通じて地球環境を考える書籍を、企業の協賛により日本全国の学校(小・中・高)に届けるプロジェクトを手がけられたそう。「本が市場に流通するのと、学校の図書館にその本が入るのとでは、一冊あたりの読者の数は全く違います。伝えたいことが伝えたい人にちゃんと伝わる仕組みから考えていく。僕らがやるべきことはそれでいいんだと思ったんです。」と、上田さんは語ります。市場の販売数よりも、最も「伝えたい」対象である子どもたちに「届き」、「伝わる」ことが大切。本の内容をより多くの子どもたちに伝えるため、制作した書籍を学校に送り、図書館に所蔵してもらったり、学校教材にしてもらおうと、伝える仕組みから“デザイン”したこのプロジェクトは、次第に学校の先生に向けたアプローチに形を変え、次は児童・生徒の生の声を聞きたいと、さらに「深化」しているそう。「いろいろ課題があった上で、勉強しながら次のステップに進む方が上手くいきます。寄り道をしているんですが、それで見えてくることがある。」と、地道に思考しながら歩みを進めていくのが、上田さんのスタイルだそう。

実はすごい?! ニッポンの交通安全

日本に限らず、地球を活動の舞台としている上田さんは、アフリカ・タンザニアで交通安全意識を高める「アフリカANZENプロジェクト」にプロボノ活動として参加されています。ここでの活動を通じ、日本の交通安全の凄さを思い知ることがあったと話してくれました。日本では定番キャンペーンといえる「交通安全の標語」や「交通安全週間」、「黄色い帽子をかぶっての集団登校」についても、世界では「そんな考え方があるのか!」と驚く国がほとんどなのではないかというのです。

「ソフトとしての日本の交通安全運動のレベルや実績はすごい。幼児や初等教育の頃から交通ルールを学ばせ、徹底して交通安全の意識を高めている。交通法規の改正だけでなく、その意識があるから、国別で比較すると、日本の交通安全はクルマが普及している先進国の中においても、交通事故件数を減らすことに成功しているのでしょう。」

世界の中で日本の交通安全運動の位置を意識してみるという視点は初めてでした。欧米各国の交通安全運動事情や、現在すごい勢いでクルマの普及が進んでいる中国、インドなどのアジア諸国やアフリカでの事情はどうなのか、調べてみる価値がありそうです。

アフリカの人気歌手が歌う「anzen unten」。そう安全運転!

アフリカでは警察のモラルが低く、事故を起こしても賄賂でうやむやにしたり、事故が起ったことを問題にしなかったりと、社会の中で「便利なクルマを安全に乗ろう」という意識が想像以上に低いそう。そんなタンザニアで、交通安全意識を「歌の力」で高めようと活動しているのが、上田さんもサポートしている、タンザニアに在留する日本人を中心に個人の立場で活動する「アフリカANZENプロジェクト」です。彼らは「anzen unten(安全運転)」という歌を作詞作曲し、タンザニアの男女トップアーティストに歌ってもらうという試みをしています。

「人気歌手が安全運転の歌を歌い、テレビがヘビーローテーションでPVを流したり、その音楽を使ってライブを開催したりすると、それが交通安全意識の向上につながる。民間で始めた運動ですが、タンザニアの警察もその可能性に注目しているそうです。」

日本人とタンザニア人が協働で制作した「anzen unten」のPV(ロングバージョン 監督:鈴木勉)https://www.youtube.com/watch?v=cRxmJLBXnMY

楽しく社会を変えていこうというこのアプローチ、おもいやりライト運動の考え方と似ていて面白いですね。

「いまタンザニア警察は、現地日本大使館の支援を得て、「anzen untenセンター」を建設し、啓発活動を推進していこうとしています。日本の民間企業からは、「anzen unten」のロゴマークが入った、モニターが搭載された広報専用車輛が警察に寄贈され、歌と映像を流しながらさらなる啓発活動を進めていくなど、協力活動に広がりが出ています」と上田さん。

考えてみれば、クルマを乗り始めたばかりの国では、クルマの安全な乗り方やマナーを教える仕組みもまだ未熟なのが当たり前です。もちろん、道路のインフラや罰則などの法制度を整えていくことも重要なのですが、それと同時に、安全運転のマナー意識を広めていくアプローチをすることで、「安全なクルマ社会」が生まれるのです。タンザニアでの取り組みのように、安全運転の先進国として日本が世界の国々に提供できる交通安全運動の考え方は、実はかなり多いといえるでしょう。

「お・も・い・や・り」を世界に発信! おもいやりライト運動にできること

「自動車会社にとって、これからのマーケットはアフリカやアジアですよね。その時にクルマというハードだけではなくて、交通安全運動というソフトも一緒に持っていけば、それこそCSV(Creating Shared Value)になりますよね。」

上田さんのこの言葉には、自動車輸出国である日本と日本の交通安全運動の立ち位置について、深く考えさせられました。おもいやりライト運動は夕暮れ時の安全を高めようという、交通安全運動の中でもごく一部をテーマにした活動です。ですので、おもいやりライト運動をそのまま海外に展開するというのは、ちょっと時期尚早な感じもありますが、様々な交通安全運動を行う団体と連携することで、日本の「お・も・い・や・り」の心を「交通安全」として発信することで、各国の交通安全事情に貢献していけるかもしれません。

「日本の交通安全運動を一度、すべて図式化すると、現在の時点でやれていることとやれていないことが可視化出来て良いかもしれませんね。おもいやりライト運動はここをやっているけれど、ここが出来ていないから誰かやらない? と呼びかけたりできます。ドイツはここまで出来ているけれど、アフリカは何も無いなんてことも、図にすると分かりやすそうです。」

おもいやりライト運動の今後へのアイディアを惜しげもなく話してくださった上田さん。Think the Earthさんの活動のお話を聞きに伺ったのに、いつの間にか上田さんが我々おもいやりライト運動事務局チームの話を聞いてくださっているという、なんだかあべこべな取材になりました。自分の話をするよりも、まずは目の前の人の話を良く聞く。上田さんのこの姿勢が、人と人との交流を生み出し、人や企業を巻き込み、時には巻き込まれたりしながら、社会を変えていく力に変わっていっているのだなと感じました。

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