世の中に新しい領域を照らそうと一歩踏み出すスイッチを入れたい人を応援する。おもいやりライト運動が進めているそんな「ラウンジスイッチ」の一環として、新潟ではエネルギッシュに活動している人に会って情報交換し、その想いを学んできました。
新潟では、アート作品の展示、シンポジウム、食おもてなし事業など様々なプロジェクトを市内各地で展開して新潟を盛り上げる芸術イベント「水と土の芸術祭」を2009年から3年おきに開催しています。一般市民も多く参加するそんなイベント、そして関わる人に出会うことでソーシャルアクションのヒントを見つけようという狙いもありました。
案内、そして出会いのサポートをしていただいたのは、新潟市中央公民館長の五十嵐政人さん。五十嵐さんは「水と土の芸術祭」に関わるほか、数々の街を盛り上げる活動のバックアップもしています。
「水と土の芸術祭(以下:みずつち)」は市民自ら企画し運営をおこなう、市民と地域が主役のプロジェクト。それを市民の立場として支えるのが「みずつち市民サポーターズ」です。
活動はみずつちに限らず新潟でおこなわれる文化活動のサポートなど広範囲。
その代表を努めている本間智美さんをご紹介頂きました。
新潟市で生まれた本間さんですが、その後は名古屋で建築デザインをしながら生活。しかし街作りに関わりたいというかねてからの夢を実現するために新潟へ戻り、活動範囲を建築デザインから街のデザインへと広げてみずつちの副実行委員と「みずつち市民サポーターズ」の代表に就任。新潟の魅力を掘り起こし、地域住民や行政と一緒に地域づくりに取り組んでいます。
どうやって夢を実現していくか? そんな問いに対して行動力の大きな本間さんは、「やりたいことは口に出してみる。妄想も大切」と答えてくれたのが印象的です。
みずつちに関わる催しのひとつに「小須戸ARTプロジェクト」があります。江戸から明治、大正時代にかけて信濃川の舟運で栄えた小須戸商店街を中心にしたプロジェクト。風情ある建物が多く残る小須戸本町通りを盛り上げようという企画です。
その中心となったのが「町屋ギャラリー薩摩屋」。かつて商店だった古い建物を整備し、古き様子を残しつつ一部をギャラリーとして地域活動の拠点として使えるようにし、土・日・祝日は一般開放しています。その代表として、プロジェクトを引っ張るのがその街で生まれ育ち商店を経営している村井豊さん。
そう感じた村井さんがおこなった街おこしが、この古い建物を整備してみんなが集える場所にするという企画でした。当初は批判的な意見もあったといいます。しかし、それらに耳を傾けながらも「時にはグイグイ引っ張っていかないといけないときもある」という意識でプロジェクトを進め、いまでは土日祝のギャラリーオープン日だけで年間5000人が訪れる観光スポットにまで発展しました。
「机上の空論だけでなく実際にやってみることでヒントが見えてくる」という言葉も印象的です。
新潟市の南西寄りに「岩室温泉」という300年以上の歴史を持つ温泉があります。そこで「温泉街全体を美術館にしよう」と武蔵野美術大学とのコラボで1年おきに開かれていたイベントが「アートサイト岩室温泉」。それを企画したのが岩室温泉で生まれ育ち、都会で仕事をしてから地元に戻ってきた和田義昭さん。
アートを使った町おこしを発案し、「日本旅館×学生アート」というコラボを実現させました。
「予算が少ないから、広告にかけるよりも何か目立つイベントを開いてメディアに取り上げてもらって広めよう」。「アートサイト岩室温泉」のルーツはそんな和田さんの発想にあるそうです。
「日本旅館は敷居が高い。その敷居の高さがよさでもあるけれど、だんだん訪れる人が減ってきた。だから地域に訪れる人を増やそうと思ってはじめました。」
「日本旅館と美術の組み合わせは意外でしょう? 『(普段は利用客しか入れない)旅館の中に入れて面白かった。』という声も聞こえて、やった甲斐がありましたね。」と和田さんは言います。
こういった取り組みは、これからの温泉旅館のあり方のひとつのヒントにもなるかもしれません。そしてなんと、ことのイベントが縁で岩室温泉に移住した武蔵野美術大学関係者まで出現したというから驚きです。
その後、新潟で市民プロジェクトに関わるメンバーを集めてミーティングを行いました。テーマは「市民プロジェクトを成功させるのに必要なことは?」や「地域の人を巻き込んで盛り上げるにはどうするか?」といった、今後のプロジェクトを成功させるためのヒントを見つけること。
参加者は本間智美さん(前みずつちサポーターズ会議代表)、石田高浩(小須戸アートプロジェクト)、大内郁さん、高橋郁乃さん、一之谷歩さん(以上アーツカウンシル新潟)、本間和人さん、高橋秀彰さん、小林美果さん(以上みずつちサポーターズ)、永田篤史さん(朝日新聞記者)、小川弘幸さん(文化現場代表,水と土の芸術祭総合2015ディレクター)、そして五十嵐政人さん。
熱い議論を通じて参加者からは
「地域にある宝をまずは地元の人に気付いてもらう」
「おもしろいこと、変わったことをしてとにかく興味を持ってもらえるように」
「上手に情報発信するかはイベントの成功を大きく左右する」
「いかに関心を持ってもらいメディアに取り上げてもらうか(メディアに取り上げられると好意的になる人もいる)」
など活発な意見が出ました。
おもいやりライトでは今後も、熱意を持って何かに取り組む人と情報を交換しながら、応援していきたいと思っています。