関東では、いつもより早い梅雨明けが訪れた7月上旬。一方で、まだ梅雨のまっただ中という宮城県気仙沼市に、おもいやりライト事務局のメンバーが向かいました。
おもいやりライト運動のメンバーが東日本大震災の被災地を訪れるのは今回で3回目。陸前高田(2012年)、石巻(2014年)に続いて、今年は気仙沼への訪問です。
実は今回の目的は、私たちと一緒に活動したい!と、自分なりのおもいやりライト運動の活動や点灯アクションを実施してくださるような可能性を秘めた方々に会いに行く、「おもいやりライト」の仲間づくりを目指しての訪問。
なぜ、気仙沼なのかというと、おもいやりライト運動事務局のある横浜には、気仙沼のアンテナショップ「気仙沼PORT」が営業しており、おもいやりライト運動事務局メンバーと気仙沼との人的交流があったりするからです。また、東日本大震災から7年経った気仙沼の現在の交通事情が気になったことも理由のひとつでした。
気仙沼があるのは宮城県の海側の一番北で、ほとんど北側の岩手県へ食い込むような恰好です。東北新幹線一関駅(岩手県)から車で気仙沼を目指します。内陸部の一関から沿岸部の気仙沼までは、1時間半ほど。夕刻に一関を出発したため、途中で日没を迎えました。道程のほとんどはアップダウンが繰り返される山間道路のため、街灯はほんの少ししかありません。見通しが良いがまばらな街頭から道は暗い状態で、驚いたのは、早期ヘッドライト点灯が徹底されていないことでした。
私たちの車も、対向車が直前に気づいた歩行者を避け、センターラインを越えた運転に危険を感じ慌てた、という事があり、そんな道路事情を経験したことから、地方でのおもいやりライト運動の必要性を改めて実感したのでした。
気仙沼は漁業のまちで、まちの中心は太平洋に面した港です。しかし、7年前の大震災で気仙沼の港は大きな被害を受けました。その爪痕は、今もハッキリと見ることができます。港のまわりはいまだに茶色い土が見える空き地だらけ。ショベルカーなどの重機が数多く稼働しています。また、新たに建設中の「防潮堤」は、まちと海を完全に別離させるかのような驚くほどの高さと要塞のような姿。まだまだ復興の途上なのだなということがひしひしと伝わってきます。
そんな気仙沼で、おもいやりライト運動事務局メンバーが最初にお会いしたのは、一般社団法人まるオフィスの根岸えまさん。港に面した広いシェアオフィスで待ち合わせです。
「一般社団法人まるオフィスは気仙沼のまちづくり会社です。東日本大震災を機に気仙沼に移住した若者と地元の若者が2015年春に立ち上げました。”地域協育”と”移住定住推進”という2軸の事業を気仙沼で展開しています。“地域協育”では、地元の産業である漁師や農業を18歳以下の子どもに体験してもらったり、地元のベンチャー企業と大学生などをマッチングさせて、インターンなどをやっていただいたり、高校生向けのマイ・プロジェクト支援プログラム『マイプロ(マイプロジェクトアワード)』などがあります」と根岸さん。
気仙沼には大学がないため、18~22歳の若者は、ほとんどまちから出て行ってしまうとか。18歳以下の学生さんや20代から30代の若者が、「まるオフィス」の人材育成プログラムに参加しているというのです。気仙沼にもっとも少ない20代である根岸さんは、震災を機に気仙沼に移住し、気仙沼を盛り上げようと頑張っています。
>根岸さん、おもいやりライト運動について印象はどうですか?
「おもいやりライトは、デザインが全体にかわいいですね。若い人とやるのであればデザインは大切だと思います。気仙沼は新しいモノ好きでムーブメントが生まれやすいのですけれど、人に依っているので、継続が難しいですよね」と根岸さん。
おもいやりライト運動を理解していただけたので、一緒に何ができるか、これから考えていきたいと思いました。
続いて気仙沼市役所を訪問しました。こちらで気仙沼市総務部危機管理課交通防犯係の須藤理恵さんと、気仙沼警察署交通課交通指導係長の小山直人さんに、おもいやりライト運動を説明します。おもいやりライトの活動を行うには、行政の応援が不可欠と考えています。
「おもいやりライト運動と同じような趣旨の運動は、宮城県でも行っています。それが『ラ・ラ・ラ』運動です」と警察の小山さん。3つの「ラ」とは、早めのライト点灯(ライト・オン)、目立つ装備・服装(ライト・アップ)、右側注意(ライト・ケアフル)を意味します。夕暮れの交通事故が多いのは、宮城県も同じ。そのため、おもいやりライト運動と同様の活動が警察主導で行われていたのです。
「ただし、運動の対象は高齢の方です。また、運動を行う交通安全協会の方々も高齢化が進んでいるのが問題です。そのため、今年の春の交通安全運動には、事業主会に協力していただいて、20代の新入社員を動員していただきました」と小山さん。
そうした交通安全運動に、地元のNPO法人の協力を得て、若い人に加わってもらってはと提案してみれば、「そういうことは考えてもみませんでしたね。ぜひとも協力していただきたいですね」と警察の小山さん。市役所の須藤さんも「これをきっかけに若い人の参加が広まっていただけると嬉しいですね」と笑顔を見せてくれました。
(VOL.2へつづく)